所詮男と女の出会いと別れというものはコーラと同じようなものだ。封を切った瞬間が恋におちた瞬間、とも言うべきか。大好き大好き大好きと炭酸が溢れ出て。







hide-and-seek








あたしは気の抜けたコーラそのものだ。それを今、ズッという醜い音を立てて飲んでいる。意味も無くストローを噛んで。(あ、ストローを噛む人って欲求不満なんだっけ?)(そんなバカな)



「修兵先輩、彼女できたらしいな」




店に入るなり目の前の赤髪の男はそう言った。あたしは残った四角い氷をストローでざくざくと突付く。恋次、もう何も言わなくていい。あんたはそのミルクだとか砂糖だとかレモンをいっぱいいれた紅茶だけを啜っていれば。混じりっけのないストレートが好きなあの人の話なんかしなくてもいい。





「それでさ、その女が可愛いって俺の友達が言うもんだから見に行ったらよ、なんと相手がミヨ子だったんだよ!ありえねぇって!」





一人で騒ぐ恋次を見て、自分の彼氏だというのにコイツバカだなって思った。バカなのはあたしのほうだというのに。右手は相変わらず氷を突付いたままだ。あたしの時間は修兵の家へ上がったところでストップしている。









『もしもし??おーい?』
「…はい」
『今大丈夫か?』





電話の向こうで恋次と話すあたしを彼はずっと見ていたが途中、隣の部屋から愛犬をあたしの方へ放した。ワンワンと吼える彼の犬。恋次に聞こえるようにわざとやったと確信するのに時間はかからなかった。




『?お前今どこにいるの?』




聞かれて当たり前だ。あたしは犬を飼っていないのだから。それにこんなに特徴のある甲高い声で鳴く犬を恋次はきっと修兵の犬だとわかってしまうはずだ。






「お客さんが来てるからまた後でかけなおす!」







切った後に見た修兵の顔は今も忘れることが出来ない。窓から差し込む夕日に照らされた、楽しそうな顔。


「苦しい言い訳だな」








あの日から一言も話していない。休み時間にいつも寝ている姿があたしの席から見える。たまに、目が合う。逸らされる。気になる。こうして恋次といるときも修兵のことばかり考えている。ざくざく。やっと出てきたコトバといえば




「あたしもミヨ子とやったらはまるかな」

なんて間抜けなコトバ。それに対して恋次は笑って


「あぁ、良過ぎてお前、堕ちるかもな」

って言った。





帰りの電車は行ったばかりだったようで誰もいない駅のホームでキスをした。その最中、今あの人もこんなことをしているんだろうかとぼんやり考えていた。恋次と別れた車両の中、水で薄まったあのコーラを全部飲み干しておけば、と後悔しながら揺れる車両に体を預けて浅い眠りについた。今になってあの炭酸の喉に上がってくるような気持ち悪い感覚が襲ってきたような気がした。
















20050725 修兵ひどい!













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