そりゃ前兆っていうものはあったけれど、こんなのってなしでしょう。相合傘して家路の半分ぐらいきたときに急に立ち止まって、別れようだなんて。土砂降りの雨の中、残されたあたしはどうしたらいいの。








迷い犬









「うわーん檜佐木ー!!」
「うわ!どうしたんだよ!」



詰所への道をとぼとぼと三歳児のようなおぼつかない足取りで歩いていると部屋の明かりがついていて、まさかと思ったら本当にいた。雨か涙か鼻水かわかんない混ざったものが檜佐木の胸に染みていく。あぁ洗濯しなきゃ。




「お前冷てェって。体拭けよ」



檜佐木はあたしの密着した肩を優しく離して、引き出しから出したタオルを投げた。ここへ歩いてくるのに精一杯だったあたしにそれをキャッチできるエネルギーはもうどこにもない。ぽすっと床に落ちたタオルは投げた本人に拾い上げられる。あたしは出来損ないのフリスビードッグ?(ねぇ、そうなんでしょ?)




「風邪引かれたら書類溜まって大変なんですケドー」
「…あたしは明日休むつもりなんですケドー」
「何言ってんだよ九番隊の動力!」



ワシワシと髪の水分が拭き取られる。ワシワシ、ワシワシ。シャワーの後、自分で水を落とすことの出来ないポメラニアンみたい。(ねぇ、そうなんでしょ)そんなことを考えていたら目の前にいる人がプっと笑った。




「何よ」
「え?あははは!頭がスゲーことになってる」
「何したのよ!」
「くっはははは!鏡見る?」




そこに映し出されたのはもこもこ頭のあたし。アフロみてぇ、と彼は笑う。ちがう、あたしは手入れされてない野放しのプードルだよ。(ねぇ、そうだと思うよね)でも笑ってしまう。顔の倍ぐらいはあるかなぁ。鏡を置いた檜佐木は手櫛で髪を整えてくれた。体の全細胞がそこに集まっているみたいにどきどきする。








は笑ってたほうがいいよ」




檜佐木の指があたしの髪を滑る度に湿っていく。だから泣くなって、とその長い指で鼻を突付かれた。(あたし泣いてるんだ)濡れたタオルで涙を拭いてありがとうと言った。













「雨、全然止まねぇな。家まで送ろうか?暗いし」





一瞬考え込んでしまった。独りじゃ心細い。でもあたしの傘はないからきっと檜佐木の傘に入るんだ。途中でさっきみたいに捨てられたらどうする?もう帰る場所なんてないよ?公園で捨て犬と夜を過ごすの?(ねぇ、そのほうがいいんでしょ?)














「…今夜は一緒に寝よう」





あたしがうん、と言ったのを最後に詰所の明かりは消え、あたしは檜佐木に肩を抱かれながら一つの傘の中歩いた。その夜は行為をすることはなかったけれど、ずっと傍にいてくれた。檜佐木の腕の中はあたしの欲しいものがいっぱい詰まっていてまた涙が溢れてきた。檜佐木は、そんなあたしの頭を優しく撫でて、頬にキスをしてくれた。


























(遅れながらも20000hitお礼です。お持ち帰りOKです。  20050322 アンコ)








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